お前はまだ語りたいのか。
自分でもそうは思うのですが、ブログも作っちゃったし自由と市民権を得たみたいな顔して騒いでも許してくれよな。
前の記事【悪い魔法使いの話】を書くにあたって、しんどいにもほどがあると折り紙つきの孟徳ルートを改めてやり直したんですが。
わかっていても、いやわかっているからこそか、一周目とは味わいの違うダメージを厳かにそして丁重に食らいました。
しんどい。相も変わらずしんどい。色あせることなくしんどい。
言いすぎて、2018年分の「しんどい」も早々に使い果たしそう。
孟徳ルートで上がるのは「キャー♡」とかの黄色の方面じゃなくて「ア゛ア゛……」という地獄の野犬みたいな唸り声が9割9分。
いやときめくの場面もあったかも知れないのだが、別のこん棒で頭を殴られているので心が覚えていない。
どう言語化していいかわからないが、とにかく呼吸が乱れそうなものが繰り広げられている……みたいなアレです。アレってなんなんだって聞かないで。私が知りたいよ。
大まかなストーリーについてはプレイ感想にも書いたので、そこについて今回は省こう。やっぱり本当に緻密で素晴らしい神の手によるシナリオだった。私が富豪なら、このシナリオをてがけたトムさんに、数億分のアマゾンギフト券をあげたい。土地とかマンションだとなんか、大変そうじゃん……権利とか固定資産税とか……いや知らんけど……
◆誓い=呪いの日
私が孟徳ルートでうずくまるくらい好きなのは、花ちゃんが薬をのませようとするシーンなんですけど、もう一つ、心に焼き付いて離れないのは、友に裏切られた孟徳が誓いを立てるスチルです。
語られるエピソードとしては、長いシナリオの内のほんの一部でしかない長さですが、あれが丞相にまでのぼりつめた孟徳という存在の裏打ちというか、「信じる」を鍵とした孟徳ルートに耐えがたいほどの重みを持たせているわけです。
あのスチル、あのスチルの凄みはやばい。
一周目プレイしてた時、鳩尾をグーで殴られて、当然のように濁点付きの声が出てしまった。
ア゛ア゛~もうやだ~~嫌じゃない~嫌じゃないけどやだ~(IQ2)
命からがら炎をくぐってきたと思しき孟徳は、どこか呆然として、目は虚ろ。
生きるか死ぬかの極限状態だったから、助かることに全ての神経を費やして、思考が追いついていない。
元譲を目にして、現実に迎えられた時。孟徳の顔つきががらっと豹変する。
人懐こい目は極限まで吊り上がり、口元は裂いたような形。
分類こそ「笑顔」だけれど、あれは呪う顔だ。
そんな形相のまま、逃げることも後回しにして、あの誓い。
あの日、一度孟徳は死んだのだろうと思う。
当たり前に喜怒哀楽を感じていた男は葬られ、一人の覇王が生まれた。
孟徳は聡明で力があり、人よりも誇り高い。
そして壊れてしまうほど弱くはないが、変わらずに己を保っていられるほど屈強でもなかった。
ゆえに、心の一部を切り離し、過去と決別したのだろう。
何度見ても、呆然とした雰囲気から一転、夜叉のような怒気をはらむ変化が壮絶で、非常に苦しい。いきなり酸素なくなる。呼吸をさせてくれ。
◆呪いをとく魔法使いについて
【各キャラにとって花ちゃんという存在】のmemo内で、独断と偏見により孟徳にとっての花ちゃんを、悪い魔法をときにきてくれた魔法使い、と位置付けました。
その上で、孟徳の魔法をとくのに必要なのは『何があっても信じ続ける聖女のような清らかさか、刺し違えるくらいの覚悟』とも記述しました。
実際花ちゃんが聖女のように清らかで、孟徳が厭う「嘘」を一度もつかなかったとしたら、ルート後半のように傷つけ合いながらすれ違うことなく、文若も元譲は迷惑をこうもむることなくハッピーエンドに着地したかもしれません。
でも待て待て。待たれい。
嘘ですよ嘘。結婚詐欺とかじゃなく。
確かに胸を張れる行為ではないけど、終生「嘘」をつかない人間なんているかあ??って話なんですよ。
花ちゃんが修道院とか尼寺で暮らしてたならまだしも、課題で図書室に集まったくせにまずコイバナとかしちゃうようなどこにでもいるJKが、死体で川がせきとめられたとか一族郎党始末したとかやばい逸話に事欠かない男を、一瞬たりとも疑わず信じぬく、なんて普通に考えて無理がすぎる。
きょうびディズニープリンセスだって嘘くらいつくわ!
嘘をつかない、疑わない、信じてもらえなくても信じて信じて、無償の愛で幸せを勝ち得る。
おとぎ話の清らかな村娘ならともかく、現代育ちの普通の女の子を主役に据えて、孟徳ルートをそういう形で収束させたなら、恐らくそこにリアルや共感は生まれない。
花ちゃんは最初から小さな嘘をついているし、孟徳を疑う心を捨てきれなかった。
だから迷いに迷い、すぐに正解にはたどり着けず、暗殺を企んだくそジジイ(※口が悪い)にそそのかされて死にかける、という代償を払って、ようやく自分の答えをつかみとるわけです。
道のりとしては非常に遠回りだし、舗装もされていない。
でも人並みに疑念やずるさや保身を持っている、聖女じゃない女の子が、信じない男の横面をぶんなぐって目を覚まさせるとしたら、きっとこの道しかなかった。抜け道もバイパスもない、いばらの道しか孟徳と結ばれる道はなかった。
孟徳ルートのみならず、他のキャラのルートにも言えることですが、花ちゃんの武器や強みは、策を示す不思議な書物ではありません。
いくら奇妙とはいえやはり道具にすぎず、戦況を動かすことはできても、人の心は動かせない。
プレイヤーとしては花ちゃんはとにかく可愛くて、こんないい子が他にいる??ねえ??なあ??おい??って、宴とかでこきおろしてくれたモブとかの胸倉をつかんでやりたい感じですが、実際容姿は人並みで頭の出来もそこそこで、戦うこともできない、何かに長けているわけではない凡庸な女の子です。
彼女が人の心を動かしたのは、懸命さや健気さや諦めなさ、「誰かのための努力」じゃないかと思います。
取り立てて珍しくもなく、誰もが持っているけれど、最後まで貫き通すのは難しい。
自分ができる範囲のことを最大限がむしゃらに頑張って、運命らしきものに抗う、それが、花ちゃんの「誰にでもできるけれど誰にもできなかった」功績じゃないかと。
孟徳を支え、常にそばにいた元譲ではどうしてだめだったのか。
彼は孟徳の魔法をとく気がなかっただけで、力が足りなかった、などでは決してないと思います。
元譲は孟徳の思想ではなく孟徳自身に仕えているので、彼が魔法によってどこを向いて進もうと、関係なかったのでしょう。
扱いがいつも「元譲www」という気の毒なオチ要員でしたが(文若ルートでさえ休憩なし)揺らぐことのない覚悟と決意を持った、彼もまた傑物だと思います。
◆孟徳じゃんこれ孟徳じゃん
まあ蛇足といえば蛇足なんですけど、書きたいから書く。
正しいヲタクの末裔なのですぐにイメージソングとか言い出すのである。
元々iTunesが疲労骨折するくらい聴いていた、すごく好きな曲なんですけど、改めて聴いたら最初から最後まであまりにも孟徳だったのでPCの角に頭を打ち付けて気絶した。
THE YELLOW MONKEY『BURN』
http://www.utamap.com/viewkasi.php?surl=59947
初っ端の「赤く燃える孤独の道を」からもうだめ。許して。
特に
「悲しい気持ちないわけじゃない」
「可愛い可愛い淋しくはない」
「飛べない鳥はとり残されて」
この三つが個人的にしんどいです。
許せ。許してくれ。何回許されようとしているんだ。
過呼吸になりながらもう一度言う。
孟徳ルートは神のシナリオ………
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